この賞は、IECの技術専門委員会(Technical Committee: TC)、分科委員会(Subcommittee: SC)、システム委員会(Systems Committee: SyC)、IEC適合性評価システム(IEC Conformity Assessment Systems)の国際議長、国際幹事、幹事補佐等の役職において、委員会の運営やIEC規格の開発及び促進に関して顕著な成果、貢献が認められた個人に対して授与されるものです。
Ulrikeは、世界的に高齢化が加速する社会状況を背景に、自立生活支援の規格づくりを国際的に行うことを目指して、2015年に設立されたIEC SyC AAL(Active Assisted Living)の国際議長を設立時から務めています。「個々の技術や製品にフォーカスするのではなく、システム全体の標準化に取り組み、デバイスやサービス、インフラなどの相互運用に関わる複雑な問題の調査・解決を目指す」というシステム委員会のコンセプトは当時非常に新しいものでした。システム全体の標準化に取り組むために、IEC SyC AALには医療機器や家電製品、IoT、コンピューターシステム、ネットワークに精通した多様な専門家が参画していました。その中にはIECの規格開発プロセスに新たに携わるメンバーも少なくありませんでした。そこでUlrikeは、多様な経歴をもつメンバーがそれぞれ能力を発揮できるようにIEC SyC AALを6つのワーキンググループと1つのメンテナンスチームに編成、規定された手順に沿って作業が進められるよう組織を率いてきました。
彼女のリーダーシップのもと、IEC SyC AALはこれまでに9つの仕様書を発行し、現在も8つの作業プログラムを進めています。高齢者や障がい者などのAALユーザーが自立した生活を送るためのニーズをサポートし、委員会としての役割を果たすために重要な課題に取り組んでいます。また国際議長としての職務に加え、AALのユースケースをまとめたIEC TS 63134:2020+AMD1:2022 – “Active assisted living (AAL) use cases”や、AALシステムやAALサービスの設計・開発・実装などにおいてAIを利用する際の倫理指針であるIEC SRD 63416:2023 – “Ethical considerations of artificial intelligence (AI) when applied in the active assisted living (AAL) context” の発行に、プロジェクトリーダーとして貢献しています。
Ulrikeは、SyC AALが定めた「あらゆる年齢のAALユーザーの生活の質を高め、自立した生活を可能にする」というビジョンの実現に向け、国際議長として優れたリーダーシップを発揮し、世界的に増加するAALユーザーをサポートする仕様書の開発に尽力したことが各国の代表団体から高く評価され、今回受賞に至りました。
受賞者
コメント:Ulrike Haltrich (ソニー・ヨーロッパ 欧州技術標準室)
このような栄誉ある国際的な賞を受賞できたことは、ソニーそして私自身にとって大きな誇りであり、光栄に思います。
私がこの仕事を進めたいと強く思った理由は、標準化が人々の幸福と安全に直接的に影響を与えることが世界的に認められているからです。IEC SyC AALの活動を通じて、私たちは人々が病院や施設ではなく自宅でより長く生活し、健やかに年齢を重ねるために必要なシステムのサポートを受けられる可能性を高めてきました。
2015年にSyC AALの国際議長に選出された際に私が考えたのは、強力なシステム委員会を設立して最高の仕事をしよう、ということだけでした。私にとって、サステナビリティとアクセシビリティの分野で世界的な変化をもたらすことができるということを知ることは情熱の源です。
今回の受賞はソニー、そしてソニーの標準化・技術戦略に携わるすべての人々にとって励みとなるものです。競争の激しい技術の世界において、世界的な団体が当社社員の功績を評価したということは、ソニーのビジネスにおいても有益なことと思います。
Thomas A. Edison Award
International Electrotechnical Commission (IEC, 国際電気標準会議)は毎年、専門委員会または IEC 適合性評価システムの効果的な運営に対する献身的 な奉仕と顕著な個人的貢献を称えて、Thomas A. Edison Awardを授与している。この賞は、現役の TC/SC 幹事(議長、幹事、幹事補佐)、IEC 適合性評価システムおよびその補助機関の幹事が対象。