ソニーグループ(株)先端研究部の田中 雄が、台北で開催された量子情報理論領域の国際会議 QIP2024にて、2つの共同研究に関するポスター発表を行いました。
東京大学 村尾研究室との共同研究の成果
量子状態生成(以降、QSP)とは、ある量子状態の古典記述が与えられた場合にその量子状態を生成するタスクで、多くの量子アルゴリズムのサブルーチンとして使用されています。汎用的なQSPは高い計算コストがかかることが知られており、その計算量を減らすために生成する量子状態の種類を制限した多種多様なQSPが提案されています。
今回、生成する量子状態がノード数NからなるFree Binary Decision Diagram (FBDD)と呼ばれる有向非循環グラフの構造を持つ場合に、その量子状態をサイズがO(N)の量子回路を用いて生成できることを示しました。本成果により、効率的に生成可能な量子状態の新しいクラスが提供され、既存の量子アルゴリズムの適用範囲が広がることが期待されます。
大阪大学 藤井研究室との共同研究の成果
量子コンピュータは、様々な産業や科学分野で重要な役割を担っている非線形常微分方程式(ODE)を効率的に解くことができる可能性を秘めています。しかし、どのようなODEが、どのような仮定のもとで、量子コンピュータを用いて指数関数的な高速化を達成できるかは、依然として重要な研究課題の一つです。
今回、量子コンピュータ上で効率的に解くことができる、量子可解ODEと呼ばれる非線形ODEのクラスを提案しました。さらに量子可解ODEは、問題のサイズNに対して対数計算資源でシミュレートすることが可能であることを示しました。
■藤井研究室との共著論文
Quantum Solvable Nonlinear Differential Equations
それぞれの発表に関して、有識者からのフィードバックを期待しています。