ソニーグループ(株)先端研究部の鉄川弘樹がエクスパーク合同会社 代表の伊賀聡一郎氏との共同研究の成果として原著論文「企業研究所における人文学者と技術者の協働の変遷:PARCにおける研究プロジェクトの事例分析を通じて」を執筆し、ヒューマンインタフェース学会論文誌25巻4号に掲載されました。
この論文では、HCI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)の分野で、人文学者と技術者がどのように協働を進め、研究を創出したかを理解するため、著名な企業研究所である米国Xerox Palo Alto Research Center(現在はSRI International)の6つの研究事例を分析し、重要な洞察として3つの視点を明らかにしました。
(1)研究における問題空間を設定する主体が、時間の経過とともに、技術研究主導から人文学研究主導へ変化していた。また、技術者側が主導する応用システムの開発進行中に人文学研究の成果を援用することによりコンセプト転換が起こっていた。(2)技術者側が問題空間設定の主体となっている場合に、人文学研究と技術研究の領域間で相互の往還が見られた。(3)両者の協働がプロセス化されるにしたがって、人文学者側の役割が広がり、相互の往還が見られなくなっていった。人文学者が機会発見ワークショップやフィールドワーク実践を通じてプロジェクトの問題空間の設定、すなわちゴールの設定や共有の役割を担っていた。
これらの知見に関する議論に基づいて、企業の研究所における人文学者と技術者の協働の将来展望についての洞察を提供しています。