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2024.07.10

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海洋環境のリアルタイムセンシングに応用可能な、複数地点をつなぐ海中電磁波通信に成功

ソニーグループ株式会社の Exploratory Deployment Group の研究チームは、電磁波を活用した新たな海中無線通信システムの開発に取り組んでいます。従来の音波や光による通信との特長の違いを生かし、浮遊 […]

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ソニーグループ株式会社の Exploratory Deployment Group の研究チームは、電磁波を活用した新たな海中無線通信システムの開発に取り組んでいます。従来の音波や光による通信との特長の違いを生かし、浮遊物や海藻、海面・海底などの影響を受けやすい浅瀬の海洋環境のセンシングや、湾岸設備の観測などへの応用可能性があるテクノロジーです。
この記事では、国立研究開発法人海洋研究開発機構 (以下、JAMSTEC) と2021年度から2023年度まで行っていた共同研究の成果を紹介します。

背景:
昨今、地球温暖化による環境の変化に伴い、水産業の生産性向上やCO2の吸収・固定の役割を果たすブルーカーボン保全などの分野で、海中の環境をリアルタイムでモニタリングできる技術への関心が高まってきています。このモニタリングを実現するためには、海中の温度・pHなどの情報を定点観測するセンシング技術に加えて、海中のセンシングデータを安定かつ効率的に地上に伝達できる通信システムが必要です。

研究概要:
ソニーがJAMSTECと共同で研究を進めてきた海中無線通信システムには、大きく2つの特長があります。

  • 電磁波による通信
    従来、海中における無線通信では光や音波を利用することが、一般的でした。一方で、これらは海面・海底や浮遊物などの障害の影響を受けやすいことが、特に浅瀬で実用する際の課題となっていました。そこで、こうした外部環境の影響を受けづらい特長を有する電磁波通信を採用しました。

  • 海中の複数地点のデータを同時受信
    海中モニタリングを実現するためには、特定の1地点の観測では不十分で、海中の複数地点を同時に観測し、海上へ届ける仕組みが必要になります。仮に、送信器と受信機が1対1の通信しかできない場合、それだけ多くの通信デバイスを海中と海面に設置しなければならなくなり、かえって海の環境を損なってしまったり、船舶の航行を妨げてしまったりするなどの事象が起きる可能性があります。そこで、海中で1つの受信機が複数の送信機を同時に受信するシステムを構築しました。

研究では、電磁波シミュレーション技術と、オーディオ機器などのモバイル端末で培ってきた無線通信やアンテナ設計に対する知見を生かし、今回の通信システムに適した送信機・受信機を独自開発しました。

使用した送信・受信アンテナは独自理論に基づいて導き出した最適な形状で設計されており、受信アンテナの設計には360°どの方向からの電波に対しても同等の感度を持つ独自技術も用いられています。

実験の概要:
実際に、2024年3月に石垣島近海で行った実証実験では、水深5~10mの海底に設置した2つの送信機(それぞれpHセンサーとCTDセンサーを搭載)から送信されたデータを、1つの受信機で同時に受信することに成功しました。
通信速度は最大50kbps(距離4.5m)、通信距離は最大6.5m(通信速度6.25kbps)となりました。
さらに、ソニー独自の省電力無線通信規格であるELTRES™を活用し、受信機で得たデータを海上のブイからクラウドに送信し、センシングデータをリアルタイムで確認することもできました。

今後の展開:
今後は、より長距離での通信を可能にするための技術開発を行うとともに、ブルーカーボン保全や海岸施設の点検などの共業など海中の環境データへのニーズがある分野において、社外パートナーと連携をしながら、センシングシステムの構築を目指していきます。

関連論文:

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