コンピュータビジョン分野のトップカンファレンスICCV2023とCVPR2023で論文発表をした吉村さんへのインタビューを実施。研究にかける想いやソニーでの研究開発活動の実態をご紹介します。
吉村 仁和
ソニーグループ株式会社
テクノロジープラットフォーム
Technology Infrastructure Center
AI技術部門 基盤AI開発部
2021年入社
ICCV2023とCVPR2023にて論文採択
コンピュータビジョン分野では最難関国際会議とされ、論文採択率も20~30%のICCVとCVPR。
この度、吉村さんの以下の論文が同学会で採択されました。
CVPR採択論文
― 学会に参加した狙いや、参加して感じたメリットについて教えてください。
組織としての広報的な側面もありますが、一番に感じるのは技術力の向上です。学会に向けて論文を書くことにより、日々の研究開発の精度は間違いなく向上します。また学会に参加し世界各国のトップ技術者との交流から刺激を受け、自身の研究に取り組む水準が向上することを実感しました。特に海外の研究者と、これまでの自分との基準の違いを大きく感じました。例えば、日本国内にいると1本でも論文を通せば「すごいね!」と評価されますが、米中韓などの諸外国では年間2,3本通してやっと評価されるのです。また、海外の研究者は雇用も安定していない分、成果に貪欲で働き方に対する意識も日本の研究者と大きく異なることが、大変刺激になりました。
― 学会から帰国後、自身の働き方に影響はありましたか?
かなり変わったと思います。自身に対しても組織に対しても要求水準が上がりました。これまで満足していたレベルに留まらず、もうひと踏ん張りするようになりました。また、意にそぐわないことははっきり「ダメ」と言う海外の研究者にも影響を受け、必要な提言は上司部下問わず伝えるようになりました。上司には少し大変な思いをさせているかもしれませんが、本質を突いた意見は寛容に受け止めてくれます。「社内で勝負するのではなく、常に外の世界を見ていきたい。”世界で勝てる技術”を創る水準で仕事をしていきたい」、とこれまで以上により強く思うようになりました。
ソニーでの研究活動の実態
― 企業の研究職として製品化を目指した開発も求められる中で、研究と開発のバランスをどのように考えていますか?
企業の研究職である以上、研究も開発もどちらも大切にしないといけないと思っています。技術向上のためには論文発表含む研究は不可欠です。一方で、開発も大切。研究した技術が製品化に向かうことで世の中に実用される嬉しさを感じることもできますし。私の組織では「R2D2」というスローガンがありまして、「研究2年開発2年」、どちらもバランスよくやりましょう、という意味です。個人的には、AI分野の技術革新の速度は高まっているので、研究開発サイクルのスピードはもっと高めていかないといけないと考えています。
― ソニーで研究に取り組む良さはどのようなところにありますか?
多事業展開しているソニーでは、技術の提案先が複数あることがメリットだと思います。どのような研究をしても、グループのどこかしらに技術の出し先があります。1カ所に断られても複数出し先があることは、研究者としてはとてもありがたいことです。一方で、グループ内への製品化だけを目的にしていては、“世界で勝てる技術”は生み出せません。製品化のみを出口にした開発ばかりの業務にならないよう、研究にもしっかり取り組んでいく必要があります。学会から帰国して以降は特に、「もっと研究に時間を割かせてくれ」と組織に対して意見を伝える機会も増えましたね。
― 今後の研究活動について教えてください
各学会で世界のトップ研究者と触れ合い大きな刺激を受けました。今後も組織の仲間と切磋琢磨して、“世界で勝てる技術”を創っていきたいと思います。社内の小さな世界で満足せず、引き続き論文発表など世界と戦えるようアカデミックな分野にも注力していきたいです。技術を外に出すことで得られるメリットも多いと思うので、技術公開のチャンスを逃さず研究活動に取り組んでいきます。
関連リンク
動画:【論文対談】データ拡張をもっと自然に!CVPR2023採択論文”Rawgment”を紹介 | Sony’s Research Minds